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出発の日。
バーナードさんが涙を見せたのは、あの一度きりで、次の日にはすっかり元気を取り戻していた。
いや、そう見せかけているだけなのだろうけど、バーナードさんの中でも諦めがついたのか、悲しみは表に出さないようにしている。
前の晩に、俺はこれまでの話を全てバーナードさんに打ち明けた。
バーナードさんは、俺の話に真剣に耳を傾けて何度も頷いてくれた。
それどころかバーナードさんは、優くんが待ってるという話を聞くと、せめてものお礼にと夕陽が浮かぶ海までのチケットを手配してくれたんだ。
「マニーゴッドの2番ステーションから出る船に乗れば、問題なく到着できるだろう。これぐらいのことしか出来なくて申し訳ないが、ぜひまた遊びに来てくれ」
「ありがとうございます。遊びに来てもいいんですか?」
「勿論、大歓迎だ。いつでも来てくれ」
出発の日。そして、別れの日。
バーナードさんは、気丈に振る舞いながらも俺を港まで送り届けてくれた。
ピノキオクエストに行く時と同じ様に。
だけど、あの日とは違って雨が降っていない。
俺は何度も船から手を振って、バーナードさんもそれに答えてくれた。
「優くん」
船の甲板から見える景色は、果てしなく広がる大海原。
船は優くんの待つ、夕陽が浮かぶ海へ向けて出航した。
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