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鼻の奥が熱くなり、心臓が締め付けられるように苦しい。
下腹部から広がる重たい感覚。
「僕と殺り合うつもりかい? 和也君……」
たちまち広がる焼き尽くす熱気。
優の全身から炎がほとばしる。
体の正面がひどく熱い。
俺は腰を落として、抜刀する準備を整えた。
案内人が言っていたが、海からは戦闘禁止エリアではない。
砂浜から、いくつもの火柱が噴き出す。
『何て命力だ。だが、ここを退いたら男として負けだ』
そうだ……。退くわけにはいかない!
「それ以上、一歩でも前に進めば、僕は君を敵と見なして戦闘の意思を示す」
優君は、片手を前に差し出して、俺に手の平を見せた。
たちまち、手の平からは小さな炎が灯ると回転して円を描き始める。
その炎は徐々に巨大に。
「やってやる……。優君……君を止めるためだ!」
優君は冷たく微笑んだ。
「残念だよ。和也くん。やっぱり君は新撰組屯所で殺しておくべきだったね」
手の平から放たれた炎の渦から、何かが姿を現す。
それは何なのかは、すぐにわかった。
黒い刀。
柄から刀身の先まで黒く染まった刀が姿を現して、炎に紛れながら優くんはしっかりと握り締めた。
あれは……。
光刀が光を感じさせるならば……。
あれは闇を思わせる刀……。
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