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─────渋谷和也─────
海の上の旅はあっという間に終わり、船は目的地に到着した。
メールが来てから、バーナードさんの家で一泊、船の中で一泊、そして、今日が約束の日だ。
時刻は正午。
優くんとの待ち合わせ時刻まで、アト6時間。
船を降りると、そこには予想もしていなかった光景が広がった。
寂れた港の先には、小さな波が打ち寄せる広大な砂浜。
砂浜の手前には、南国風の木々が多く立っていて、その向こうにはホテルらしき大きな建造物がある。
観光地と言われるぐらいだから、もっと華やかな場所を想像していたが、孤島にホテルが建っているだけの寂しい印象だ。
ただ、砂浜の先に広がる水平線が見えるほどの果てしない海は、信じられないほど綺麗だった。
底が見えるほど透き通る様な美しい水が、太陽の光を反射させて煌びやかに輝く。
船を降りると、港の出口には一人の男が立っていた。
物静かで一点のみを見つめる視線は、コンピューターキャラ独特のものだ。
「こんにちは。夕陽が浮かぶ海へようこそ」
男は目の前まで来ると、陽気に話しかけてきた。
「こんにちは」
俺もそれに反応し、とりあえず挨拶をした。
ちょうど、その時、俺が乗ってきた船が港を離れ始める。
「ここはブラックアウト内で観光地と指定されている場所です。観光地についての説明を聞きますか?」
俺が頷くと、男はマニュアル通りと言った感じで話し出した。
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