昇華

17/29
420人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
死神は、地面にうずくまるように苦み続けた。 消え始めた黒い力。 死神は、それを阻止しようと黒い力を外に逃がして全身に纏わせる。 再び黒い力を発している死神。 その瞬間、俺はある一つの事に気がついた。 初めの状態に戻った。 死神は光の力に極端に弱い。 つまり、俺にとって一番有利だった状況だ。 今なら、光刀で斬れば死神は致命的なダメージを負うはず……。 まるで、仁がそうしろと言っているような気がした。 この状態なら死神を倒せると……。 俺は柄を持つ手に目一杯の力を入れて、光刀を構えた。 斬るんだ……。 もう斬る道しか残されていないんだ……。 だけど、その結末じゃあ……。 決して幸せになることはない……。 死神は断末魔のような声をあげて、黒い力を全て放出した。 再び、辺りに漂い始める禍々しい力。 光刀を持つ手が僅かに震えた。 皮肉なことに、光刀には本当に最後の力と言うべき目映い光が放たれ始める。 俺は……。 仁を……。 “か、” 「──!」 “か……かずや。聞こ……えるか?” 語りかけてくる、その声。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!