昇華

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ザクッ! 異様な音だった。 固くて突き刺さるような音。 肉を裂いた音ならば、こんな音はしないはず。 俺は恐る恐る顔をあげた。未だに杏奈は両手を広げたままだ。 その時点で、初めて状況を理解できた。 死神が持つ鎌の刃は、杏奈の手前で地面に突き刺さっていた。 杏奈が避けたというよりは、大鎌の刃が当たらなかった印象。 死神は、すぐさま突き刺さった鎌の刃を抜き、再び大きく振り上げる。 何故、杏奈に当たらなかったんだ? 杏奈は動じることなく、その場に立ち続けた。 死神からは、変わらず杏奈に殺意が向けられている。 振り上げられた鎌を持つ死神の手。 腕が僅かに震えていた。 どういうことだ? 死神は、鎌を振り下ろそうとしているようだが、自分の腕を上手く扱えないようだった。 段々と苛立ちを見せる死神。 『死神の中に、別の人物がいる』 別の人物? 『ああ。間違いない。これは古手川仁の命力だ』
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