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「仁!」
俺は力の限りに、無理にでも立ち上がった。
死神は暴れるように何度も鎌を振り回すが、自分の腕のコントロールが効かないみたいだった。
“邪魔をするな”
初めて聞く死神の動揺した声。
『あの様子だと、おそらく死神の中で眠る古手川仁の命力が、目を覚ましたんだろう』
目を覚ました?
『おそらくな。奴は蝕んで奪ったとは言ったが、何らかの理由で媒体となる宿主の力を少しでも残しとかなければいけなっかたんだろう』
じゃあ仁は……。
生きてる?
『そう決まったわけじゃない。あくまでも古手川仁の命力が死神の中に存在するだけで、必ずしも生きているとは言い難い』
そうなのか?
死神はなおも腕を振り回す中で、とうとう大鎌を地面に落とした。
「──!」
次の瞬間、死神にとっては信じがたい出来事が起こる。
体の中に留めておいたはずの黒い力が消え始めていた。
「仁くん」
杏奈は、死神の姿を見ながら涙を流し始める。
どういうことだ……?
まさか、仁は……。
うずくまる死神。
黒い力も弱まり、今は隙だらけの状態だ。
死神を道連れにして、死のうとしているのか?
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