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死神は、地面にうずくまるように苦み続けた。
消え始めた黒い力。
死神は、それを阻止しようと黒い力を外に逃がして全身に纏わせる。
再び黒い力を発している死神。
その瞬間、俺はある一つの事に気がついた。
初めの状態に戻った。
死神は光の力に極端に弱い。
つまり、俺にとって一番有利だった状況だ。
今なら、光刀で斬れば死神は致命的なダメージを負うはず……。
まるで、仁がそうしろと言っているような気がした。
この状態なら死神を倒せると……。
俺は柄を持つ手に目一杯の力を入れて、光刀を構えた。
斬るんだ……。
もう斬る道しか残されていないんだ……。
だけど、その結末じゃあ……。
決して幸せになることはない……。
死神は断末魔のような声をあげて、黒い力を全て放出した。
再び、辺りに漂い始める禍々しい力。
光刀を持つ手が僅かに震えた。
皮肉なことに、光刀には本当に最後の力と言うべき目映い光が放たれ始める。
俺は……。
仁を……。
“か、”
「──!」
“か……かずや。聞こ……えるか?”
語りかけてくる、その声。
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