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何も口にすることはなく、静かに光刀の持ち主を見ている。
その表情は、私が今までに見てきたどのヒカルの顔にも当てはまらなかった。
遠くを見るような切ない表情。
「ヒカル?」
私の言葉に、ヒカルは反応しない。
それ以上は何も訊かず、私は光刀の持ち主と死神に視線を戻した。
ひしひしと伝わってくる凄まじいエネルギー。
大気を揺らがすような波打つ力。
ドクン
ドクン
ドクン
そこに、大きな心臓を置いたように、力が波を打っている。
あまりにも膨大なエネルギーは、早く力を誇示したいと主張しているようだった。
ドクンと鳴らす力は、球体状に光刀の持ち主を包んでいる。
いや……彼が発しているのか。
パソコンの解析結果は……。
測定不能。該当データはなし。
当然と言えば当然か。
「アルティメットブレイク」
ヒカルが小さくそう呟いた。
「アルティメットブレイク?」
私が同じ言葉を繰り返して訊くと、ヒカルは頷いてから口を開いた。
「世界の王補佐のリーダー。イエスが使う技だよ」
私は何も答えずに、死神を見た。
死神は、この力に圧倒されている。
光刀の持ち主がいよいよ攻撃体勢に入った。
始まる……!
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