昇華

7/29
前へ
/29ページ
次へ
─────シンバ────── 渋谷和也の異常な状態。 俺たちの中では、アダムが一番驚いていた。 「おいおい。あいつ、あんな切り札を持っていたんですね。切り札の合図は知ってたけど、まさかアルティメットブレイクだったなんて……」 「うんー。すごいよねー。リミットタイムのその上に到達するなんて。あの時以来だねー」 リリルの言うあの時とは、俺たちの生前の王が戦った相手のことだ。 「さすがシンバさんー」 そう言いながら和也のことを見るリリルの瞳は、どこか輝いていた。 「まるで大気が、彼の味方をしているみたいだ。うん? さっきから黙っててどうしたんですかー?」 リリルは俺の方を見ながら訊いてきた。 「実はな……あれにはちょっと……いや、大きな問題がいくつかあるんだ」 「問題ー?」 「一つ。ちょっとだけ人格が変わっちまうんだよ。強くなる反動っていうかな。何でかは不明だが」 そう話していた矢先、渋谷和也からは信じがたい言葉が出た。 大鎌の刃を易々と受け止めた直後のこと。 「おいおい。冗談だろ? もっと本気を出してくれよ」 その言葉を聞いて、俺は手の平を顔に当てた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

423人が本棚に入れています
本棚に追加