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取り出した器具を次々と地面に落とす。
イエスは、その中から1つのメスを拾い上げて口を開いた。
「例えば、命力のみを刺す道具があってもおかしくはないと思わねえか?」
そのまま右手に持ったメスの刃が、俺の腹部に刺さった。
体の中で響き渡るドスっと鈍い音。
なんだ。これ。
体の中に眠る命力が、メスに吸い込まれていく。
「シンバ。あんたは一つ勘違いをしている」
そう言い放ったのは、目の前でメスをぶっ刺しているイエスじゃない。
涼しい顔をして岩に腰かけている別のイエスだった。
また、新たに現れたイエス。
こいつもレベルは六万を超している……。
これで六万超えが四人……。
「我々が死神の働きに期待したのは、レッドキングダムの壊滅だけじゃない。プレイヤーの体内エネルギー収集だ」
イエスは不気味に笑う。
「その意味では、死神が全体の7割のプレイヤーを始末できたことで、作戦は成功したと言える」
「まさか……」
背筋を嫌な汗が伝った。
イエスは小さく頷いて答える。
「そうだ。キョウカを動かす準備が整ったんだ。今までに蓄積したプレイヤーの体内エネルギーのおかげでな」
俺は、奴が言っている意味を理解した時、全身に不快な寒さを感じた。
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