空白の12時間

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取り出した器具を次々と地面に落とす。 イエスは、その中から1つのメスを拾い上げて口を開いた。 「例えば、命力のみを刺す道具があってもおかしくはないと思わねえか?」 そのまま右手に持ったメスの刃が、俺の腹部に刺さった。 体の中で響き渡るドスっと鈍い音。 なんだ。これ。 体の中に眠る命力が、メスに吸い込まれていく。 「シンバ。あんたは一つ勘違いをしている」 そう言い放ったのは、目の前でメスをぶっ刺しているイエスじゃない。 涼しい顔をして岩に腰かけている別のイエスだった。 また、新たに現れたイエス。 こいつもレベルは六万を超している……。 これで六万超えが四人……。 「我々が死神の働きに期待したのは、レッドキングダムの壊滅だけじゃない。プレイヤーの体内エネルギー収集だ」 イエスは不気味に笑う。 「その意味では、死神が全体の7割のプレイヤーを始末できたことで、作戦は成功したと言える」 「まさか……」 背筋を嫌な汗が伝った。 イエスは小さく頷いて答える。 「そうだ。キョウカを動かす準備が整ったんだ。今までに蓄積したプレイヤーの体内エネルギーのおかげでな」 俺は、奴が言っている意味を理解した時、全身に不快な寒さを感じた。
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