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目の前に閃光が走り抜けると同時に、真っ赤に染まる視界。
全身の力が一気に抜けて、俺は地面に崩れ落ちた。
どこからか溢れる大量の温かい液体のせいか、地面が暖かい気がする。
その瞬間、空気や音や質感の全てが遠退いた気がした。
これが死か……。
やり残したことが多いせいか、意外と寂しいな。
不思議なものだ。
世界には自分しか存在しないのではないかと、孤独感が強まる。
駄目だなあ。
レッドキングダムは、リリルに任せておけば大丈夫だろう。
なあ。アンネ……。
レッドキングダムの子供たちは、お前に任せておけば大丈夫だよな?
何だか。他のみんなに全てを投げっぱなしにしたような気分だ。
…………。
終末の木。
俺たちは、それを止めることだけを目標に動いてきた。
あの木の存在こそが、世界が変わる瞬間。
ブラックアウトの存在意義……。
ずっと鍵を探していたんだ。
「──!」
そうか……。やっと謎が解けた。
俺が和也に期待した理由が。
神刀。
黒田研究員は、終末の木を作りたかったわけじゃねえ。
段々と意識が薄れていく。
リリル、アダム。
そのことに早く気がつけ……。
そのことに気がつけば……運営委員会は倒せる。
俺はそう願いながら意識を手放した。
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