空白の12時間

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和也が、殺気を放ってきた位置を特定できなかったのも無理はない。 何しろ、敵がいる位置は、オリンポスの頂上付近だからな。 奴はどこから来たか? 答えは簡単だ。 オリンポスの頂上。 つまり、頂上に設置されたメインストーリーの扉を抜けて、この辺りまで来たんだ。 オリンポスの頂上に設置された扉は、メインストーリーに直結しているからな。 メインストーリー側の世界から、通常のフィールドに移動してきた。 そんなことができるのは、プレイヤーじゃないことだけは確かだ。 運営委員会。 ここまでは概ね、死神戦の前にしていた予想通りだな。 だが、予想外だったのはその相手だ。 俺の勘が正しいとしたら、この感覚はおそらくアイツだろう。 常に喉仏を抉られるような独特の感覚。 俺は、あえて自分の位置を特定させるために、オリンポスに向かって殺気を放った。 「来い」 今ので気付いたとしたら、敵は俺を追ってくるはずだ。 挑発に乗る相手だろうからな。 売られた喧嘩は買うはずだ。 ほらな。 凄まじい勢いでオリンポスを降り始める敵。 俺は、ひたすら静かに足を進めていく。 誰もいない場所を目指して。 誘導に成功した俺は、誰もいない荒野で敵が到着するのを待った。
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