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─────渋谷和也─────
「みんな、大丈夫か?」
床に着地すると同時に、仁が全員を見渡しながら言った。
「ええ。とりあえずは無事みたい」
杏奈が埃を振り払いながら答える。
「もぅー!こんなに奥が深いなら、勢いよく飛び込まなきゃよかった!」
美沙が不機嫌そうな顔をしながら、落ちた時の衝撃で乱れた服を直した。
天井から差し込む僅かな光。
見上げると、落ちた時の穴は遥か高い位置に見える。
数十メートルはありそうだな。
帰りはどうするんだ……。
そもそも……。
辺りを見回すと、ここは上の階以上に薄暗い。
暗闇に慣れてきた目は、段々と様々な物を把握し始める。
古びたレンガが大量に敷かれた広大な空間。
上の階よりも圧倒的に広いだろう。
『光がないと不便だろう』
光刀はそれだけ言うと、微々たる命力を俺から吸いとり、刀身を光らせた。
「おっ、便利だな。さて、これからどうするか」
仁はさほど慌てた様子もなく、むしろ冷静な口調でそう言った。
「ねえーあれ見て!」
何かを発見したのか美沙が遠くの方を指差す。
その言葉に反応して、全員が指先に視線を集めた。
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