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新撰組屯所だ。
丸の内のビジネス街に建つ、江戸城のような風格を漂わせた異質な建物。
見間違うはずがなかった。
あれは、新撰組屯所だ。
脳裏に焼き付けられているかのように、今も鮮明に覚えている崩壊の姿。
「なんで……新撰組屯所があるのよ……」
美沙は唖然とした様子だった。
美沙だけじゃない、全員が言葉を失うほど新撰組屯所を見上げている。
まるで、これまでのことが夢だったかのように。
沈黙を破ったのは杏奈だった。
「冷静に考えれば、あれが本物であるはずがないわ。何かの能力かしら?」
それに対して、珍しく押し黙っていた仁が口を開く。
「まさか、タイムスリップする能力なんてないよな?」
「さすがにないと思うわ。神でもない限りね。第一にタイムスリップさせる意味がない」
杏奈の冷静な回答に仁が何度か頷く。
「そうだよな。ありえねえ。だけど、これが能力だとしたら、どんな意味があるんだ?」
確かに……。
答えは考えても見えなさそうだ。
「とりあえず新撰組屯所へ行ってみないか?」
仁の言葉に従い、全員で歩き出す。
あそこに何が……?
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