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近づく度に、戸惑いが大きくなっていく。
いくら見渡しても、他にプレイヤーがいる様子はない。
『不思議な能力だな。タイムスリップじゃないのだとしたら、脳に直接働きかけた能力か?』
光刀は、既にこれが能力により作られた世界だと決めつけているようだ。
「……」
もしも、本当にタイムスリップだとしたら、もう一人の俺たちがいるってことになるよな。
そして、その中には、はるかも……。
もう復讐はしないと心に決めている。
誰を恨んでいいのか、怒りを誰にぶつけていいのかわからなかったから……。
ふと気がつけば、新撰組の領土に差し掛かったところだった。
視線の先には、思わず足を止めてしまうほど懐かしい物が置かれている。
クエストボックスだ。
あれは新撰組に入るための試験として受けさせられた、逃げ惑う強き存在クエスト。
「──!」
さっきまで感じられなかった気配を察知する。
仁、杏奈、美沙も気がついたみたいだ。
クエストボックスからしばらく壁沿いに進んだ先、曲がり角の向こう側に気配を感じる。
多分、二人だ……。
俺たちは自然と息を潜めた。
「僕は間違っていないでしょうか……?」
この声は……。
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