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「おじさんは世界の王と呼ばれているよ」
「せかいの……おう?」
怪しげなおじさんの名前に、私は思わず笑ってしまい、僅かに心の隙を作ってしまいました。
「私の名前はどうでもいいんだ。お嬢ちゃんは、お父さんとお母さんが何をしているか知りたくないかい?」
「パパとママを知っているの?」
「ああ。私はパパとママが働いている会社の社長だからね」
「え!」
私は思わず目を見開いて、おじさんの瞳を見た。
やっぱり冷たい目をしていた。
この人の瞳には、一体何が見えているのだろう。
「信じてくれるかい?」
私は黙って頷いた。
「じゃあ、ここで話すのもなんだから、おじさんがジュースをご馳走してあげよう」
「あっ。でも、兄弟たちが家で待っているんです」
私は周りに時計がないか確認しながらそう言った。
「大丈夫かい? お父さんとお母さんの話は聞かなくとも?」
「い、いえ!聞きます」
一瞬迷ったが、私は返事をした。
こうして私とおじさんはスーパーを出て、近くの喫茶店に入った。
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