心臓の穴

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こんな怪しい人の話は聞いてられない。 「ちょっと待ってくれ」 その場から離れようと店の出口へ向かって歩くと、おじさんの慌てた声が聞こえてくる。 「もし協力してくれたら、君の願いを一つだけ何でも叶えよう。そのゲームが完成したら、人を生き返らせることだって可能かもしれないぞ」 私はおじさんの言葉には耳を傾けず、足早にお店から去った。 少し遅くなってしまった。 帰ってから、みんなの夕食を作らないと。 私は早足で家路を歩く。 ここからうちまで歩いて20分ほど。 きっとみんなお腹をすかしているに違いない。 もうすぐ家に着きそうな時、私はいつもとは違う違和感を覚えた。 100メートルほど先で、大勢の人だかりを作っていた。 何かあったのだろうか? あの辺は自分の家があるはず。 胸騒ぎがして、私は走り出した。 同時に、遠くの方から救急車のサイレンらしき音が聞こえてくる。 「すみません。すみません!」 私は何があったのかを把握するために、人だかりを押し退けてその中心部を目指した。 「ひき逃げらしい」 「それにしてもひどいな」 どこからかそんな声が聞こえてくる。 人だかりの中心部。 そこには、路上に横たわる二人の男女。 心臓が破裂するかもしれない。 全身、血まみれになり、変な方向に曲がった腕。 どうか見間違いであってほしい。 横たわっていたのは、私の双子の弟と妹だった。 ほぼ即死だったそうだ。
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