心臓の穴

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地面には、弟と妹を中心に夥しい量の血が広がっていた。 初めて見る大量の真っ赤な液体。 足がガクガクと震える。 背筋に、虫が這っているような気色の悪い感覚が伝う。 景色が遠くなっていく味わったことのない感覚。 留守番をしていたはずのもう一人の弟が、茫然とした様子でその光景を見下ろしていた。 壊れる。 壊れる。 心が……。 私が寄り道をしなければ……。 私が真っ直ぐ帰っていれば……。 「ごめんなさい。ごめんなさい」 弟は膝を地面について、地に伏せる形でぶつぶつと呟き始めた。 「これはこれは。取り返しのつかないことに」 背後から聞き覚えのある声が耳に届いてくる。 茫然としながらも、私は振り返って声の主を確かめた。 さっきのおじさんだった。 この人についていかなければ……。 どこにぶつけていいかわからない怒りは、自然とこのおじさんに向かう。 全て自分の責任なのに……。 「あの年齢で命を失うなど、哀れな子達だな」 そう発するおじさんの表情は、どこか楽しんでいるようにすら見える。 私は初めて自分の心の中に、怒りという感情を覚えた。
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