474人が本棚に入れています
本棚に追加
地面には、弟と妹を中心に夥しい量の血が広がっていた。
初めて見る大量の真っ赤な液体。
足がガクガクと震える。
背筋に、虫が這っているような気色の悪い感覚が伝う。
景色が遠くなっていく味わったことのない感覚。
留守番をしていたはずのもう一人の弟が、茫然とした様子でその光景を見下ろしていた。
壊れる。
壊れる。
心が……。
私が寄り道をしなければ……。
私が真っ直ぐ帰っていれば……。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
弟は膝を地面について、地に伏せる形でぶつぶつと呟き始めた。
「これはこれは。取り返しのつかないことに」
背後から聞き覚えのある声が耳に届いてくる。
茫然としながらも、私は振り返って声の主を確かめた。
さっきのおじさんだった。
この人についていかなければ……。
どこにぶつけていいかわからない怒りは、自然とこのおじさんに向かう。
全て自分の責任なのに……。
「あの年齢で命を失うなど、哀れな子達だな」
そう発するおじさんの表情は、どこか楽しんでいるようにすら見える。
私は初めて自分の心の中に、怒りという感情を覚えた。
最初のコメントを投稿しよう!