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「頭が潰れているじゃないか。これは痛かっただろうな」
弟と妹を眺めながら独り言を話すおじさんに、私は黙って近づいた。
殴るわけでもなく、どうすればいいかわからなかったが近寄って睨みつけた。
「良い瞳だ。グッと引き寄せられるような引力を持っている。素晴らしい憎悪だな」
「馬鹿にしているんですか?」
私の言葉に、おじさんは眉を曲げて理解できないといった様子でこう言い放った。
「何故? 私は馬鹿になどしていない。むしろ、哀れみを感じている」
何に対して?
そう言い放とうと思ったが、私はその言葉を飲み込んだ。
こんな奴を相手にしている場合じゃない。
踵を返した時、おじさんはこう言い続けた。
「だって哀れじゃないか。弟と妹は活動する機能を失っただけなんだよ。君が何も知らないのが、私はとても悲しいんだ」
頭の中で何かが弾けて、私はおじさんに詰め寄り胸ぐらを掴んでしまった。
息が荒い。胸の中からどろどろの何かが込み上げてくる。
すると、おじさんはこれまでの表情とは一変して、急に冷たい目をした。
「君は何も知らない。この世に死なんてものはないんだ。地面に横たわっているのは、動かなくなった肉の塊だ」
背筋がゾッとした。
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