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「天国や地獄など存在しない。死を説明するならば、例えると、ロボットの機能停止と同じだ。あれは壊れて動かなくなっただけだ」
淡々と話すおじさんの瞳は、私を見ているというよりは別の何かを見ているようで妙に不気味だった。
「いいかい? もう一度説明するよ。地面に転がる肉体は壊れているだけだ」
喫茶店で、この怪しげなおじさんが話していた言葉が過る。
「つまり、修復するという表現が正しいが、世間的な言葉を使用すると、生き返らせることが可能だ」
「生き返らせる……?」
この人が何を話しているのか、理解することができない。
でも、藁にもすがりたい思いの私としては、その言葉は全てを狂わせるほどの魔力を持っていた。
何が正しいのか?
「どうだい? 私が頭のおかしいおじさんに見えるだろ? だが、この状況で君に選択肢は与えない。私の言葉を信じてみないか?」
「本当に生き返るの?」
胸ぐらから手を離すと、おじさんは力強く頷いた。
「時間はかかるかもしれない。だが、約束しよう。いつかその日が来ることを……。ただし、そのためには君が悪魔に魂を売らなければならない? いや……。君自身が悪魔になる必要がある」
簡単なことだった。
全てを取り返すためならば、私は鬼だって、悪魔にだって、自分を犠牲にすることほど容易いものはない。
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