心臓の穴

2/36
前へ
/36ページ
次へ
走るしかない……! 『これで確信できたな。マリアは戦いを放棄してまで追ってきている。少なくとも、この方角には何かしらまずいことがあるんだろう』 ああ。 「うわっあぁ゛あ」 後ろから、仁の叫び声が聞こえてると同時に、耳を裂くような轟音が響き渡る。 仁が弾き飛ばされて、壁に激突したんだろう。 大丈夫か……!? まさか……。やられたんじゃないか? 『止まるな!』 思わず振り返ろうとした瞬間、光刀の厳しい罵声が心の中に広がる。 『今、止まれば、仁の行動が全て無駄になるぞ! 走れ!』 くそう……。くそう……。 背後から迫るおぞましい気配。 全身に緊張が走る。 駄目だ! 追いつかれるぞ! 「和也くん。行って」 前方には、いつの間にか杏奈がこっちを向いて立ち止まっていた。 能力を発動させる際に生じる独特の空気。 通りすぎた瞬間、杏奈の手からは道を埋め尽くすほどの水が放たれる。 「杏奈!」 「大丈夫! 目的を果たすことが最優先」 そんな光景を見ながら、俺は立ち止まることなく走り続けた。 道の角を曲がると、大通りに出る。 新撰組屯所だ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加