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走るしかない……!
『これで確信できたな。マリアは戦いを放棄してまで追ってきている。少なくとも、この方角には何かしらまずいことがあるんだろう』
ああ。
「うわっあぁ゛あ」
後ろから、仁の叫び声が聞こえてると同時に、耳を裂くような轟音が響き渡る。
仁が弾き飛ばされて、壁に激突したんだろう。
大丈夫か……!?
まさか……。やられたんじゃないか?
『止まるな!』
思わず振り返ろうとした瞬間、光刀の厳しい罵声が心の中に広がる。
『今、止まれば、仁の行動が全て無駄になるぞ! 走れ!』
くそう……。くそう……。
背後から迫るおぞましい気配。
全身に緊張が走る。
駄目だ!
追いつかれるぞ!
「和也くん。行って」
前方には、いつの間にか杏奈がこっちを向いて立ち止まっていた。
能力を発動させる際に生じる独特の空気。
通りすぎた瞬間、杏奈の手からは道を埋め尽くすほどの水が放たれる。
「杏奈!」
「大丈夫! 目的を果たすことが最優先」
そんな光景を見ながら、俺は立ち止まることなく走り続けた。
道の角を曲がると、大通りに出る。
新撰組屯所だ。
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