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温もり。
わらわは、大切な存在を守りたくて、取り戻したくて、ずっと戦ってきたんだ。
全てを犠牲にして。そして、いつの間にか目的も封じ込めてしまい。
互いに大量の血を流す中、弟はしっかりとわらわを支えてくれている。
不思議なことに、敗北感はない。
あのお方から託されたメインストーリーのシステムが、壊されたにも関わらず……。
そう思った瞬間、わらわは重大なことに気がついた。
わらわが守っていたのは、メインストーリー管理システムの三つのうちの一つ。
“過去”
思い返せば、メインストーリーのシステムが壊れた瞬間に、わらわの記憶は甦り始めた。
わらわの記憶は、メインストーリーのシステムにどんどん封じ込まれていた?
そんな話は、開発者責任者の黒田からも耳にしたことがないが、間違いないとみていいだろう。
あのお方はそれを知っていて、その上でわらわを出しに使ったのか?
「ハ……ハ……ハ」
何とも情けない。
一つの裏切りがあるならば、おそらく多くの影が存在しているだろう。
これがわらわの末路。
だが、もう何もかもどうでもいい。
世界を変える瞬間は誰にも止められず、進行するだろう。
そんなことも、今となってはわらわには関係ない。
わらわは満足だ。
たった一人の弟に守られているのだから。
自分の記憶の中の弟を取り戻すことができたんだから。
わらわは瞼を閉じた。
視界は暗闇に包まれる。
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