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「ど、どうしたんですか……? 瞬間移動は……」
俺が震えた声で話しかけると、天草総長はさっきよりも明らかに小さな声で答えた。
「どうやら、外に出るような能力は使えないようにしているみたいですね……。システムの外に体内エネルギーを漏れさせないようにすれば、確かに成り立つ。実に完璧です」
「じゃ、じゃあ……」
「まずいですね……。どうしましょうか」
今度は真剣だった。
「どうすんのよ! かなりヤバイじゃない! あたし、こんなところで死にたくない!」
美沙が悲鳴に近い声で泣きわめく。
『まずいな。もうほとんど足場がないぞ』
光刀の言う通り、もうこの世界のほとんどが崩れ去っていた。
表すならば、暗黒に侵食された世界。
「──!」
その時、杏奈が何故か能力を発動させた。
辺りに、細かな水を撒き散らす。
何しているんだ?
すると、俺たちの前で不思議な現象が発生した。
一部、放った水が落下せずに宙を浮いたまま静止している。
いや、何かに付着している感じだった。
これは……。
よくよく見ると、空中に足場があるようにも見える。
見覚えのある能力。
前方を見ると、そこには目を疑う光景が映し出された。
さっきまで倒れていたはずの人物が、そこに立っている。
「全て私の計算通りですね」
再び勝ち誇る天草総長。
信じられないことに、ジャネットが立っていた。
「足場は作る。早く脱出するぞ」
冷たい声でそう言った。
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