心臓の穴

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生きていた? ジャネットに何故無事だったのか今すぐ訊きたかったが、そんな余裕はなかった。 「足場はそれぞれ一直線に作る。ただ空に向かって走ればいい」 そう言いながら、ジャネットは自分が作った足場をかけあがり、空に向かって走り始めた。 素早いことに、既に天草総長はジャネットのすぐ後ろについて空に向かって走っている。 俺たちは遅れながらも、すぐさまジャネットが作ってくれた足場にそれぞれ飛び乗った。 ただ一直線に走ればいい。 ジャネットの言葉を信頼して、足を前に踏み出す。 それは目で何も見えないのに、確かに足場があった。 感触を確かめると同時に、一気に走り出す。 『まずいぞ。時間が無さそうだ』 下を見ると、俺たちが立っていた場所どころか地面の全てが泥のような物体でグチャグチャとしていた。 坂を駆け上がっているような感覚と、空中を走っているかのような何と言えない不思議な感じを体験しながら、割れた空の隙間に見える暗黒を目指す。 空が段々と近づいてきた。 そのままジャネットが暗黒に突っ込むと、天草総長が続き、俺たちはその後に身を投げるかのように飛び込んだ。 視界は完全な闇に包まれる。 どうなったんだ……? その次の瞬間、体に衝撃が走った。
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