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仁が任せとけと言わんばかりに、先陣を切って門番に歩み寄った。
「失礼します。私たちはウィザード王国に献上品をおさめるため、遠い国から足を運ばせていただきました」
冷静な佇まいは、相変わらずこっちが感心してしまうほど完璧だ。
「献上品?」
二人の門番は顔を見合わせる。
そのうちの一人が口を開いた。
「献上品の話など聞いてないぞ」
「そうでしょう。おそらく我々の国名を申し上げても、知らないでしょう。それほど遠いのです。私たちは、かの有名なウィザード王国の王族が持つ素晴らしい魔法を見に来たのです。その上で、ぜひ品物を献上させていただきたい所存です」
仁の話術により、門番が僅かに警戒心を解いた気がした。
「その献上品とは……何だ?」
その言葉に対して、仁は大袈裟に驚く素振りをしながら答えた。
「それは言えません……。王族の方ならば……」
門番たちは、明らかに動揺していた。
仁が考えていることは、とりあえず王族に会うことなんだろう。
俺はそんなやり取りを見守っていた。
「──!」
そんな最中、二人の門番の間に、突然何かが現れた。
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