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「そう。このタイミングで現れたクエストには、どんな意味があると思うー?」
リリルさんは、ニコニコとした表情でこう言った。
「黒い鍵は正直あるかわからないけど、その意味を探ってきてほしいんだー。マリアが倒されると同時にクエストが現れたのは偶然じゃない。これは誰かが意図したことだ」
そんな話を、リリルさんがしていたことを思い出したんだ。
車内は荒れた道により、小刻みに揺れる。
「魔女クエストって、嫌な名前ねー」
美沙は窓に頬杖をつき、不機嫌そうな顔をしていた。
魔女クエストは、ギリシャの海岸近くに現れたらしい。
海に向かえば、魔女クエスト付近を目的地とした自動操縦客船を、リリルさんが手配してくれていた。
こんな時に、シンバさんだったら、楽しそうにしているかもしれない。
いや……。
この中にもひとり、楽しそうにしている奴がいた。
「魔女クエストか。クリアしたら、黒い鍵は手に入らなくても、魔法の箒ぐらいは貰えるかもしれないな」
ブラックアウトを始めたことにより、仁は大学院に行かなくなってしまったが、確かヨーロッパに関する古代史を研究していたはず。
仁は、冒険に出る少年のように瞳を輝かせていた。
そんな珍しい仁の様子を見て、杏奈は穏やかな顔をしている。
レッドキングダムを出てから2時間後、俺たちはリリルさんが用意してくれた船に乗り、出航した。
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