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「あそこだな……」
俺は、確認するかのように呟いた。
前方に浮かぶ霧に包まれた目的らしき場所。
四人で船首に立ち、受け止めるようにその光景を見据える。
「情報通り、洞窟があるみたいだな」
双眼鏡を覗きながら、仁がそう言った。
霧に包まれてはいるが、確かに海と平行に、吸い込まれそうなほど暗い大きな穴らしきものが見える。
空を見ると、さっきまで晴天だったはずが今は大きな雲に埋め尽くされていた。
波に揺られながら、段々と目的の場所が近づいてくる。
「──!」
なんだ?
『感じたか』
船の右方向、離れた場所に体内エネルギーを感じたような気がした。
仁、美沙、杏奈も俺の視線に気がつき、何かを感じたようだ。
「何かい……」
何かいる?
そう言おうとした瞬間、それは海の中ではなく、上空だったことに気がついた。
空を覆う雲に紛れて飛ぶ、巨大な生物。
雲を割って姿を現すと、その全容が明かされた。
あまりにも巨大な胴体から伸びた三本の首。
首の先には、三つの頭がついている。
赤く光る目。
息を飲んだ。
今まで見てきたどんな生物よりも、圧倒的に巨大な存在。
この船よりも何十倍は大きい。
そして、山よりも……。
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