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生物の存在を確認した仁が、顔をひきつらせながら口を開いた。
「さすがにヤバいだろ」
「あんなのと戦えるわけないじゃない!」
美沙が悲鳴に近い声で絶叫せる。
「仁くん! 舵をとって! 洞窟まで」
杏奈はその言葉を口にしながら、能力を発動させた。
「ここは海よ。私の領域と言ってもいいわ」
直後、船の周囲から波柱が何本も立ち、高く噴き出していく。
波柱たちは、イビツな動きを見せて、屋根を作り出すかのように折り重なった。
次々に波柱が立つと、進路に沿うように、綺麗に重なっていく。
すると、あっという間に、水で作られたトンネルが仕上がった。
水に込められた命力により、トンネルは硬質化されていることが窺える。
水のトンネルは、洞窟の入り口まで続いていた。
『気をつけろ。攻撃が来るぞ』
見上げると、三つのうちの一つが雲を割って顔を出す。
赤く光る瞳は、真っ直ぐこの船を見ているようだった。
天草総長だったら、この状況を楽しむのだろうか?
俺はやっぱり恐怖心しかわかない……。
だけど、俺が何とかしなきゃ。
一撃防ぐだけでいい!
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