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光刀を抜刀して、すぐさま俺は命力を注ぎ込んだ。
『よし。それでいい』
刀を振り切り、溜め込んだ命力を放つ。
力は閃光となり、巨大な生物に一直線で向かった。
────ズガアアアアッン
閃光は赤い瞳に直撃すると、激しい火花を散らす。
「ヴォオオォオオォオオォオオ」
空気を振動させるほど、生物から発せられる咆哮。
首を大きくしならせて、顔面を空の方に向けた。
「よし! いけるぞ!」
仁の掛け声と同時に、船は推進して杏奈が作り出したトンネル内に突入する。
その先では、暗闇に包まれた目的の洞窟が見えていた。
生物の雄叫びがだんだんと遠退いていく。
同時に、化け物じみたあの体内エネルギーが遠くへ行くことも感じ取れた。
追ってこないのか?
攻撃は直撃したが……、効いていたとは思えない……。
洞窟が近づくにつれて、辺りには侵食するような暗闇が広がる。
終わると同時に、俺の手足は小刻みに震えていた。
間違いない……。
この中で、気づいたとしたら仁くらいだろう。
いや、もしかしたら仁さえも気づいていないかもしれない……。
「どうしたのー? 和也?」
心配そうな顔をして、横から美沙が覗き込んでくる。
「いや……」
船は洞窟内に入ると、緩やかに前進した。
あの巨大生物……。
あれは“人間”だ。
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