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私の頭の中では、シンバさんの声が聞こえてきた。
『落ち着けよ。お前は追い込まれると、目の前が見えなくなってパニックになる傾向があるな』
修行をつけてもらった時に、シンバさんは私にそう教えてくれた。
心が締め付けられる。
『いいか? 例えば、視力を奪う能力を持った奴と戦う場合、お前ならどうする?』
私は答えに悩んだ。
『リリルなんかはめちゃくちゃに暴れれば何とかなるかもしれねえが、普通はそうはいかない。まず大事なのは、把握できることを整理してから行動を起こすことだ』
そうだ。状況把握をしなきゃ、始まらない。
『何故、視力を失ったのか? そこに至るまでの過程を思い出すんだ。思い出せるだけ思い出してみろ。敵の仕草や言動、全てだ。実戦ではどんな情報でも役に立つ』
シンバさんは、私が一人の時にでも対処する方法をたくさん教えてくれたんだ。
『次に行動。落ち着いていれば、それらの情報をいかして、色々なことが見えてくるはずだ。』
相手に勝つ方法じゃなくて、相手に負けない方法。
私が生き抜くことだけを考えて、様々なことを教えてくれた。
私は決めたんだ。
シンバさんを殺した奴に会うまでは、絶対に死なないって。
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