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大丈夫。俺だって、それなりの経験を積んできたんだ。
軍団長にだって、負けるはずがない。
美沙と杏奈を救出に成功した後は退却すれば良い。
「説明は以上よ。他に何か質問はある?」
仁は満足したような顔で答えた。
「大丈夫だ。俺たちも反乱軍に入ったわけだし、仲間を救出した後は手伝うよ」
ミルクは、赤い髪かきあげながら、明らかに不愉快そうな顔をして言った。
「まあ、あんた達の助けが無くても反乱軍は勝つわ。ついでよ。誰だって生贄になるのを見過ごすことはできないわよ」
表情の奥には、僅かに暗い何かが見えたような気がした。
そのことが妙に気になり、俺はミルクに質問をする。
「ミルクは何で反乱軍を?」
「簡単よ。街が王族に苦しめられているから。それ以上もそれ以下もないわ。だけど、あえて個人的に一つ言うならば……」
薄い唇をかみしめるミルク。
しばらく言葉を待っていると、ミルクは憎悪を込めた瞳で口をゆっくりと開いた。
「私には本当の両親がいないの。もうこの世にはね。父親は王様だったから当然なんだけど。母は拷問されて死んだの」
「拷問?」
「ええ。私はその日のことを一生忘れることができずに、今日まで生きてきた」
目には、うっすらと涙が浮かんだような気がした。
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