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「きっかけは私を出産してから数年が経った頃、父親がいないことが噂になって、怪しいと思った王族が母に取り調べを行ったの。王の正妻である妃がね。一般民に魔法の文化を広げてしまう危険性を恐れただけじゃなく、きっと何かを感じたんだと思うわ。女の感ってやつよ」
ミルクは、土で覆われた天井を見上げながら話し続けた。
「王は自分の浮気がバれることを恐れて必死に否定したんだけど、妃は母を拷問して聞き出そうとしたらしいわ。母が王族に連れ去られた光景を今でも忘れない。私は部屋のタンスに隠されたんだけどね」
ミルクの瞳は、殺意が込められた憎悪の色に変わったような気がした。
「母はありとあらゆる拷問を受けたそうよ。爪は剥がされ、歯を折られ、穴を開けられ、何度も切られて。それでも母は王と関係がなかったことを主張した。王は自分の立場を守るために否定したけど、母が否定したのは私のことを守るためよ」
正直、胸を尖った何かで刺されたような気分だった。
「母は、ほとんどもう息ができない中でも、私は別の国の男の子供だと言い張り、その主張を最後まで貫いた。そして、母が死んだことにより、私は生きることを許されたの」
想像しただけで、心が締め付けられるように苦しい話だ。
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