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「これが私がここにいる理由。その後、実の父が残した二人の息子は、先祖の意思を引き継いで王となった。民への暴虐の意思も引き継いでね。この国は、魔法で暴圧することによって生きてきたの。そんな中、唯一の汚点を残してしまった。それが私の存在。魔力の遺伝子を与えてしまった」
ミルクが手を横に伸ばすと、光が解き放たれて何かが出現する。
それは、一本の大きな槍だった。
意思を貫き通すと言うばかりに、真っ直ぐで、鋭利な刃は大きく、眩しいほどに輝いている。
「反乱軍に所属するみんなは私の存在を知っているわ。だからこそ、私をとても大切に扱ってくれた。この国の最後の希望として。私はその中心に立って、みんなの希望とならなければいけない。必ず王は、私がこの手で倒す。そして、ウィザード王国を私が変えるの」
おそらくどんなことが起きても屈しない、強い眼差しだった。
ミルクの話を聞き終えた俺は、ふと疑問に思ってこんなことを聞いた。
「王を倒すことだけが目的なのか?」
うっすらと笑うミルク。
「いいえ。この国で崇めている世界樹の成熟を止めることも大きな目的よ。あれは私たちの国の神であると同時に、その真の力を発揮してはいけないのよ」
「どうしてだ?」
今度は仁が訊く。
「それは秘密……。止めるだけでいいのよ」
『なんだか気味が悪いな』
光刀は、心の中でそう小さく呟いた。
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