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「そうか。それがお前の本音ってわけか。よくわかったよ」
土方さんは沖田を跪かせた状態のまま、左手で髪の毛を握り、右手で拳を作って高く振り上げた。
拳には、命力が集中し、ここら一帯が冷えるほどの空気が醸し出されていく。
天草総長は、目を逸らさず、真剣な眼差しでその様子を静かに見守った。
和也も、茫然とした様子で二人のことを見ている。
空を覆う巨大生物は、不気味なほどに浮かんでいるだけだった。
沖田も覚悟を決めたように目を瞑り、反撃する様子もなく土方さんからの攻撃を待っている。
クエスト内の時が止まっているせいだろうか。
ただ、静かだった。
風の音さえ聞こえない。
静寂がこの場を支配していた。
しかし、その沈黙は、土方さんによってすぐに破られた。
「くそ……」
振り上げた拳から命力が引いていき、冷気が消滅していく。
「なっ」
俺は、力が無くなったように拳を降ろす土方さんの行動に驚きを隠せなかった。
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