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――――渋谷和也―――
時が止まったクエスト内。
優くんを捕えていたはずの土方さんが、別の人間の攻撃により吹き飛ばされた。
俺は、奇襲してきた奴を目で追い、これ以上の攻撃をさせない為にも何とか動きを止めたが……。
「くそっ……」
アールグレイとの戦闘で負った傷は深く、体内エネルギーも枯渇した状態の俺は、思わず片膝をついた。
『これ以上は君の体が危険だ。今の一撃だけでも大したものだったぞ』
アールグレイの強さはわかっていたが、想像していたより遥かに強かった。
どうしても、勝てない。
自分が強くなっても、それよりも遥か上に別の人間がいる。
これじゃあ、いつまで経っても、守りたい人とを守ることができない……。
『……』
深紅のドレスを着たアニーと呼ばれた女は、煙草の煙を吐き出しながら「ブルーダイヤモンドは壊滅させた」と言った。
優くんは、その言葉に深く頷いてから意味深な笑みを浮かべた。
その後ろ。十数メートルほど離れた位置でいくつもの切り傷を負った土方さんが少し前かがみになりながら口を開いた。
「てめぇ」
優くんは、そんな土方さんの方を振り返って答えた。
「また、仲間を失っちゃいましたね。あなたは何も守れない。誠を背負っても守りきれず、そして肌に傷をつけてまで記した仲間との絆も役に立たない。だから、負けるんですよ」
優くんは冷たくそう言うと、再びアニーの方に視線を戻した。
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