クリアと犠牲の意味

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「杏奈さんを迎えに行きましょう。美沙さんも連れてきてください」 神谷は言い残すように、世界樹の方へ足を進めていく。 「大丈夫か? 和也?」 「ああ。何とか」 仁に支えてもらえば、何とか歩くことができた。 そんな状況の中、天草総長が土方さんを支えながら神谷に向かってこう言い放った。 「クエストの時間は止めたままでいいんですか?」 神谷は振り返らず、歩いたまま返答する。 「ええ。そのままにしておいてください。今の状況でクエストを再開すると、また反乱軍との戦いが始まっちゃうので」 天草総長と土方さんがその言葉を聞きながら、俺たちに視線を送ってきた。 「久しぶりだな。とりあえず、あいつについていくぞ。事情の説明は後だ」 土方さんは、ついさっき優くんとあんなことがあったにも関わらず、以前と変わらぬような態度で俺たちに向かってそう言った。 あの優くんの言葉は、土方さんにはどう届いたのだろう。 仁が小さくなった美沙を胸ポケットに入れると、俺は肩に手を回して支えてもらいながら、二人で足を動かし始めた。 こんな戦いは初めてだった。 全てが未消化のまま。 心には、もやのようなものだけが残る。 神谷は世界樹の麓までたどり着くと立ち止まり、俺たちの方を振り返った。
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