クリアと犠牲の意味

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「この巨大な樹は、ご存知かもしれませんが、ブラックアウトのメインストーリーの終着点に存在する終末の木に見立てて作ったものです」 神谷がそう言うと、土方さんが口を開いた。 「死んだプレイヤーの体内エネルギーを集めてる場所だろ?」 「ええ。仰る通りです。プレイヤーは終末の木を成熟させるために作られた設定ですからね。まさに、このクエストの生贄と全く同じです。終末の木は、世界を変える瞬間にとって最も重要な物」 神谷はさらにこう話した。 「私は運営委員会を抜けたのは、世界が変わる瞬間の思想に共感できなかったからです。人は、自由に生きるものであり、虐げる行為では何も生まれない。私がクエストをこんな内容にしたのも、心のどこかで、それを証明したかったのかもしれません」 神谷は、樹に手の平を当てた。 「しかし、やはり結果は違った。王族に対する反乱は当たり前のように始まり、王族もその事態には実力で片付けようとする。戦いは、絶対に避けられなかったとしか言い様がありません。つまり、このクエストは初めからクリアすることができませんでした」 戦うことを避けること。 俺と仁は、美沙と杏奈を救うこともあったが、確かに戦いを避けることは全く考えていなかった。
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