クリアと犠牲の意味

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「時代が変わっても、人間は変わらない。私はそう思いました。世界がどうなるかはわかりませんが、私は死者となり傍観者として世界の行く末を見守らせていただきます」 そう言い終えると、神谷の背後に立つ世界樹がうっすらと輝き出した。 なんだ? 「全ては世界の為。築きあげてきた全てを崩すことであろうと、後世に繋がると信じてきた。しかし、それは間違っていたのだ。何が正しいのかは未だにわからないが、いつまでも続く論争となるだろう」 不意に、神谷と視線が交じった。 「和也くん」 神谷は再び世界樹の方へ振り返りながら口を開いた。 「何が正しいのか、君の目で確かめてほしい。黒田が光刀の所有者に選んだ君の目でな」 「選んだ……?」 俺は呼び止めようとしたけど、神谷は地を蹴って、一気に視界から消えていった。 見上げると、既に見えなくなるほどの高さまで飛んでいる。 その直後、世界樹のてっぺんから眩い光が解き放たれて、視界が覆われる。 神谷が残した言葉は何だったのか? ……。 おじさんは、どんな気持ちだったのだろう? そのまま視界が定まることなく、ホワイトアウトした。
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