クリアと犠牲の意味

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意識を失っていたのか? 気が付くと、見覚えのある薄暗いどこかに居た。 少し湿った空気と、独特の蒸し暑さ。 その時、初めて自分が横たわっていることに気が付いた。 戻ってきたのか……? まるで、今まで夢を見ていたような感覚と、大きな何かを失ったような虚無感。 ついさっきまで、魔法使いたちと戦っていたなんて嘘のようだ。 霞む視界が徐々に安定してきて見渡してみると、クエストボックスの中に居た。 室内はブラックライトの灯りに照らされて、仁と美沙と杏奈はまだ目を覚ましていないようだった。 立ち上がってクエスト開始を手続きする機械を覗き込むと、全員分のDIMが返却されている。 それに……。 画面にはクリアの3文字と、その下にはクリア報酬と書かれていた。 黒い鍵。 DIMと並ぶようにして、一つの黒い鍵が置かれていた。 リリルさんに預けた分と、これで2つ。 残りは……。 優くんが持っていた。 この目で見たから間違いない。 俺は自分のDIMと黒い鍵を手に取った。 『和也……』 何? 『私の存在は何なんだろうか?』 俺にもわからないよ……。 だって……。 しばらくして、俺は他のみんなを起こすことにした。
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