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アッサムは、地団駄してミルクの顔を何度も何度も潰した。
その度に、激しく血が吹き飛ぶ。
もう生きているのかすら、わからない状態だ。
和也もやられて、美沙も、杏奈もいない。
クエストを始めるまでは、そんなことになるなんて考えもしなかった。
どうすればいいんだ。
俺は何がしたい?
クエストをクリアしたい?
それとも黒い鍵を手に入れたい?
仲間を助けたい……。
そうだ。
俺は、和也、美沙、杏奈を助けたいんだ。
それだけなんだ。
アールグレイは、ゆっくりと坂を下り始めた。
アッサムは、変わらずにミルクに対して怒りをぶちまけている。
和也を助ければいいのか?
それとも今にも殺されそうなミルクの救出が先なのか?
何かをしなければいけないのに、考えとは裏腹に体は全く動いてくれない。
「だけど、動かなきゃ。動かなきゃ、何も始まらないんだ」
「そう。それでいいんです」
突如、数メートル先で放たれたその声は、聞き覚えがあった。
「神谷……」
さっきまでは居なかった場所に立っていたのは、不意に現れた神谷だった。
「絶望に襲いかかられたとしても、諦めることは、間違いなく許されないものです」
俺が目の前で見ているのは、紛れもなくあの神谷だった。
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