現実社会はすべて学力

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 桜が咲き誇る季節に教室で、熟睡していた大月小路に声をかける人物がいた。  それも数人の女子生徒を引き連れてだ。 「起きなさい、大月小路。生徒会長であるこのわたし、天上院綾乃は風紀を乱す貴方を一生許しませんわ!」  教室に入るなり大声を出して机を強く叩く天上院綾乃の腕には、『生徒会生徒会長』と書かれた腕章をつけている。  彼女は、進学就職率100%の名門校、私立天明学園の生徒会長であり、一年前の二学期の期末テスト以降からオレに何故か喧嘩を売りに来る変わった女だ。 「一学期には、期末テストが二回ありますわ。そして、一回目は来週の水曜日から金曜日まで。正々堂々と勝負よ!」 「……なんで勝負が期末テストなんだ?あと、うるさい」  声が拡声器並みに大きいせいで、目が覚めてしまう。目覚めが悪すぎる。  目の前で仁王立ちする綾乃を睨みつける。 「それは簡単ですわ!唯一、このわたしに勉学で勝てたのは、大月小路、貴方だけですわ!保険体育は負けないっ」  それは去年の二学期の期末テスト。唯一得意だった保険体育で、史上最高点をたたき出したオレ。綾乃は、保健体育を除く教科全て一位。  それからも保健体育は、オレが独走で一位をもぎ取り、学園からは《保健体育の魔王》と呼ばれている。 「そんなに勝ちたいなら、勉強を教えてやるか?」 「え……」 「それにお前とは、争う気はないから」  溜息を吐きながらそう言うと席から立ち上がり、教室から出て行く。誰も追いかけて来ない。また、眠れる。  廊下から中庭を眺め、誰もいないことを確認すると中庭に足を運んだ。
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