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「ごめんね。また焦がしちゃったの……」
「別にいいよ。これぐらいなら平気でしょ?」
毎朝、毎朝、焦がすトースト。
“絶対わざとでしょ?”
……なんてそんな突っ込みはしない。
だって二枚とも焦がすんだよ?
彼女の辞書に、わざとなんて言葉が存在しないことを僕は誰より知っている。
だって彼女は、そんなことを思いつく程に器用ではないから……。
僕はトーストの焦げた部分をナイフでカットすると、何もつけないで食べた。
目の前の彼女は、ピーナッツバターをたっぷりと塗って美味しそうにトーストを齧っている。
「甘くない?」
「朝、甘いものを食べると頭の働きが良くなるんだよ!」
「そう……」
僕はそれ以上言葉を発することなく、トーストを平らげた。
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