165人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
私もかつてはその人間という生き物から、天使になった身なのだ。
人間は自分が死に直面した時、稀に善い行いをしてから死ぬ者がいるという。
その時、“天使になりたい” と心強く願えば、その願いが叶う者がいるのだ。
……それがきっとここにいる私のことなのだろう。
でも人間の時の記憶があるはずもなく、何も覚えてはいない。
……思い出せもしない。
ただ私はこの世界にやって来てからずっと、一人の人間の生活を見るのが日課となっている。
その人間は天使の存在を信じていて、いつも悲しい顔をし、生きているのにまるで死んだような生活を送っていた。
……何か、悲しい出来事があったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!