第1章

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平坦な日々。変わらない風景。古びた停留所。 そんな毎日に違いを見つけるなら、日差しが暑く感じるようになってきたぐらいか。 私はもう何回にもなるか読みふるした小説に集中出来ず、ぼんやりしている。 小説は好きだった。皮肉な探偵に、少しどんくさい助手、頭のおかしい犯人。 物語には非日常があった。 "事実は小説よりも奇なり"ということわざがある。私は思う。そんな事は有り得ない。 かと言って私はこの平和な田舎が別に嫌いという訳ではなかった。 昔からの暮らしを嫌いになるなんて今更だ。 無意味である。 匂い。ふとあまり嗅いだことのないような匂いがして、顔をあげた。 女の子がいた。 女の子、と言っても年は私と同じくらいだろうか。 茶髪がかったセミロングに、キレの長い睫毛につり目、学生服。 そして匂いの原因は。 「ここ、禁煙ですよ」 「………」 どうやら、こんな日常にも終わりは来るらしい。
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