おいてけぼり

3/13
前へ
/13ページ
次へ
「置いてけ、置いてけ」 「こ…これは困る!食べられなくなってしまう!」 「置いてけ、置いてけ」 「………!」 結局、全ての魚を返すまでその声はやまなかった。 「仕方ない…夕飯は我慢しよう。あの声はなんだったのだろう?」 その者は、あの堀を「おいてけぼり」と呼んで、近寄らないように家族に話した。 「魚…楽しみにしてたのに悪かった」 夕飯は僅かなサツマイモだけとなったが、その者の家族は父の無事を一番に喜び、責めることなどなかった。 父もまた、自らの夕飯を子供たちに分け与え、子供たちの成長を一番に願った。 貧しくても幸せな生活だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加