0人が本棚に入れています
本棚に追加
「置いてけ、置いてけ」
「こ…これは困る!食べられなくなってしまう!」
「置いてけ、置いてけ」
「………!」
結局、全ての魚を返すまでその声はやまなかった。
「仕方ない…夕飯は我慢しよう。あの声はなんだったのだろう?」
その者は、あの堀を「おいてけぼり」と呼んで、近寄らないように家族に話した。
「魚…楽しみにしてたのに悪かった」
夕飯は僅かなサツマイモだけとなったが、その者の家族は父の無事を一番に喜び、責めることなどなかった。
父もまた、自らの夕飯を子供たちに分け与え、子供たちの成長を一番に願った。
貧しくても幸せな生活だった。
最初のコメントを投稿しよう!