#05 * 雪将

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家族連れや、学生のカップルで賑わう、動物園前…… みんな楽しそうに笑ったり、冗談を言ったり、じゃれ合ったりして、 僕の方を見向きもせずに、すぐ横を通り過ぎていく。 時計の前にぼーっと立ち尽くして、45分が経った。 気分はどんどん落ち込んで、 空ばかり見上げていた到着時とは打って変わり、 地面や足元ばかりに目がいってしまう。 あぁ……やっぱり僕には、いつだって考えが足りない。 流れで押し通すような強引なキス、 言葉足らずでしどろもどろな告白、 その後今日までカップルらしいことは何もできず、 挙句前日に確認もせず、当日彼女を迎えに行くこともしなかった。 嫌われて当たり前。 いじめられても当たり前。 だって僕は、いつだって…… トントン 誰かに肩を叩かれた。 そうだよね……こんな所に立ってたら邪魔だよね。 他人への考慮にも欠ける、他人様に迷惑をかける、 本当に、どこまでもダメなやつだ…… 「すみません。」 そう言って、一歩横にずれた時ーー ”ごめんね 雪将くん お待たせしました” 分厚いメモ帳と、綺麗な君の字が、見えた。
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