#05 * 雪将

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顔を上げた。 歌子さんは肩で息をしながら、顔を真っ赤にしてそこにいた。 <おくれて ごめんなさい> 「歌子さん……」 ”電車に乗るのが 久しぶり過ぎて 逆方向に乗っちゃったんだけど ずっとそのことに気がつかなくて…… おかしいなと思ったら” 彼女は申し訳なさそうにはにかんだ。 <ほんとうに ごめんね おまたせ しました> 「歌子さん……ありがとう……ありがとう……」 不思議そうに首をかしげる彼女の手を取って、僕は言葉を続ける。 「来てくれて、本当にありがとう……」 <くるよ やくそくだもん それに> 「それに?」 <わたしも ずっと たのしみに してたんだから> 「……耳は、大丈夫?」 彼女は耳栓(その上に耳当てをしているけど)を指差して言った。 <だいじょうぶ これね 雪将くんのこえも ほとんどきこえないから> 「あはは!それって、大丈夫なのかな。」 <だいじょうぶ そうだ 雪将くんの メアド おしえて> 「めあど?」 <おくれるって れんらく したかったんだけど> 「うん。」 <けいたいの めあど しらなくて れんらく できなかったから> 「携帯!歌子さん、携帯持ってたの?」 <もってるよ> 「筆談の時にいつもメモ帳を使うから、持ってないのかと思ってたよ。」 <わたし なんかあったとき でんわ できないから> 「いや、そうだけど……」 <おやと メールできないと ふべんでしょ> 「いや、そうですよね。すみません。」
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