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顔を上げた。
歌子さんは肩で息をしながら、顔を真っ赤にしてそこにいた。
<おくれて ごめんなさい>
「歌子さん……」
”電車に乗るのが 久しぶり過ぎて 逆方向に乗っちゃったんだけど
ずっとそのことに気がつかなくて…… おかしいなと思ったら”
彼女は申し訳なさそうにはにかんだ。
<ほんとうに ごめんね おまたせ しました>
「歌子さん……ありがとう……ありがとう……」
不思議そうに首をかしげる彼女の手を取って、僕は言葉を続ける。
「来てくれて、本当にありがとう……」
<くるよ やくそくだもん それに>
「それに?」
<わたしも ずっと たのしみに してたんだから>
「……耳は、大丈夫?」
彼女は耳栓(その上に耳当てをしているけど)を指差して言った。
<だいじょうぶ これね 雪将くんのこえも ほとんどきこえないから>
「あはは!それって、大丈夫なのかな。」
<だいじょうぶ そうだ 雪将くんの メアド おしえて>
「めあど?」
<おくれるって れんらく したかったんだけど>
「うん。」
<けいたいの めあど しらなくて れんらく できなかったから>
「携帯!歌子さん、携帯持ってたの?」
<もってるよ>
「筆談の時にいつもメモ帳を使うから、持ってないのかと思ってたよ。」
<わたし なんかあったとき でんわ できないから>
「いや、そうだけど……」
<おやと メールできないと ふべんでしょ>
「いや、そうですよね。すみません。」
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