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平日とはいえ、夏休み中の今、動物園は賑わっている。
人々は珍しそうなものを見る目でこちらを振り返り、
少しヒソヒソと話してから、
また何事もなかったように動物たちに向き直る。
そりゃあそうなるよね……
正午に向けて気温も上がり、如何にも真夏日といった日に、
耳当てをした女の子が歩いていたら、誰だって不思議に思うだろう。
気になって歌子さんの様子を伺ってみても、
動物達に見入っている小さな背中はとにかく楽しそうで、
他人の視線や小言など気にもしていないように見えた。
本人が気にしていないことを、
外野の僕が根に持つのもお門違いではあるけど、
どうしてもいちいち睨みつけてしまう。
<きにしすぎだよ>
振り返った歌子さんに忠告されて、僕は肩で溜息をついた。
「だって……あんまり失礼だから。腹が立ってきて。」
<きにしない きにしない>
「でも……」
<だいじょうぶ それよりも みて>
「ん?」
<ほら ねてる>
「本当だ。かわいいね。」
<うん かわいい……>
でもね、歌子さん。
あんまり可愛いとはいえね、パンダに30分もかけてたら、
今日中に全部見終われないよ?
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