#05 * 雪将

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平日とはいえ、夏休み中の今、動物園は賑わっている。 人々は珍しそうなものを見る目でこちらを振り返り、 少しヒソヒソと話してから、 また何事もなかったように動物たちに向き直る。 そりゃあそうなるよね…… 正午に向けて気温も上がり、如何にも真夏日といった日に、 耳当てをした女の子が歩いていたら、誰だって不思議に思うだろう。 気になって歌子さんの様子を伺ってみても、 動物達に見入っている小さな背中はとにかく楽しそうで、 他人の視線や小言など気にもしていないように見えた。 本人が気にしていないことを、 外野の僕が根に持つのもお門違いではあるけど、 どうしてもいちいち睨みつけてしまう。 <きにしすぎだよ> 振り返った歌子さんに忠告されて、僕は肩で溜息をついた。 「だって……あんまり失礼だから。腹が立ってきて。」 <きにしない きにしない> 「でも……」 <だいじょうぶ それよりも みて> 「ん?」 <ほら ねてる> 「本当だ。かわいいね。」 <うん かわいい……> でもね、歌子さん。 あんまり可愛いとはいえね、パンダに30分もかけてたら、 今日中に全部見終われないよ?
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