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<いいな おにいさん>
「そうかな?」
<わたし ひとりっこ だから うらやましい>
「羨ましい事なんて、何にもないよ。兄弟って言っても全然似てないし。
春兄はなんていうか……僕とは違いすぎるから……」
<……>
歌子さんは、考え込んでしまったようだ。
僕が、返事に困る言い方をしてしまったから……
「ごめん。いや、僕は一人っ子、いいと思うけどな!」
<うん……>
「でも、春兄とは仲良いんだ!今度、紹介するよ!」
<うん……きかいが あれば>
話の流れで言った事だったけど、歌子さんは乗り気じゃないみたいだ。
僕が春兄との差を感じているような言い方をしたから、
会いずらくなってしまっただろうか。
それとも、やっぱり耳の事がネックになっているのだろうか。
僕としては、せっかくだから、春兄には紹介したい。
春兄は歌子さんの事を知っても、
ネガティブな感想は抱かないだろうし、
歌子さんさえ良ければ、友達が増える事にならないだろうか。
いつも僕と二人きりでいるよりも、理解者は一人でも多い方が、
彼女にとってプラスにならないだろうか。
うん……難しいな……
<でも いつか あってみたい>
「ん? ごめん、もう一回いいかな。」
<いつか あってみたい おにいさんに>
「うん……うん! 会わせる! 会わせるよ! いつでも!」
歌子さんは微笑んだ。
穏やかな表情だ。
でも何故だろう……
少し寂しそうに見えるのは、
僕の気のせいだろうか……
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