#05 * 雪将

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「歌子さん……」 思わず頬に伸ばした僕の手を、歌子さんが捕まえた。 <なに だめよ こんなところで> 「違うよ……僕はただ、歌子さんが寂しそうに見えたから……」 <……ちがうよ さみしくないよ だいじょうぶ> 「本当に……?でも、何か……」 <だいじょうぶ きにしない きにしない> そう言いながら、手際よく重箱を片付けると、彼女は立ち上がった。 僕は大人しくそれに習うと、リュックを持って歌子さんを見た。 <さあ つぎいこう つぎ みんな まってるからね> 「待ってるって……」 呆れながらも、彼女のペースに乗せられて黙って後を追う。 今日帰ったら、春兄に歌子さんの話をしよう。 近いうちに会うチャンスを作って、紹介しよう。 どうもさっきの表情が気になる。 なんだろう……あの何とも言えぬ雰囲気。 告白の後の、あの空白の返事の時と、少し似ている。 もしかして僕、実は振られていたりするのだろうか。 いいよ、と見えたのは僕の思い違いで、 実は付き合ってなかったとか、そういうオチなんじゃ…… いかん。 考えれば考えるほど、不安になってきた。 そんなはずはない。 歌子さんは、僕の彼女だ。 誰がなんと言おうとだ。
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