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「歌子さん……」
思わず頬に伸ばした僕の手を、歌子さんが捕まえた。
<なに だめよ こんなところで>
「違うよ……僕はただ、歌子さんが寂しそうに見えたから……」
<……ちがうよ さみしくないよ だいじょうぶ>
「本当に……?でも、何か……」
<だいじょうぶ きにしない きにしない>
そう言いながら、手際よく重箱を片付けると、彼女は立ち上がった。
僕は大人しくそれに習うと、リュックを持って歌子さんを見た。
<さあ つぎいこう つぎ みんな まってるからね>
「待ってるって……」
呆れながらも、彼女のペースに乗せられて黙って後を追う。
今日帰ったら、春兄に歌子さんの話をしよう。
近いうちに会うチャンスを作って、紹介しよう。
どうもさっきの表情が気になる。
なんだろう……あの何とも言えぬ雰囲気。
告白の後の、あの空白の返事の時と、少し似ている。
もしかして僕、実は振られていたりするのだろうか。
いいよ、と見えたのは僕の思い違いで、
実は付き合ってなかったとか、そういうオチなんじゃ……
いかん。
考えれば考えるほど、不安になってきた。
そんなはずはない。
歌子さんは、僕の彼女だ。
誰がなんと言おうとだ。
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